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II 12年間の測定から
データから見た現状
 1987年からのデータを一覧表にして28〜67ページから示しました。 ここではそのデータから推測されることを述べてみます。
 測定ポイントは毎回同じではないので、同一地点での変化を見るのではなく、 八王子全体を4つに分け、測定場所の種類も大きく4つに分け、 それぞれの平均値を求めてみました。
 まず幹線道路沿い測定値の平均値経年変化を図1に示しました。 中央部は幹線道路が集中し、交通量も多いので4つの地域の中でいつも高い値を示しています。
図1
幹線道路地域別経年変化 図1

 次に測定場所別の平均値の経年変化を求め、図2に示しました。 幹線道路沿いの測定値は90年代前半をピークに下がっている傾向が見られます。 その他の道路も減少傾向が見られますが、道路以外、二階以上での測定値が上昇しています。 これは、少しは単体規制が効いているためかとも思われますが、 東京都全体ではこのような傾向は見られていないので、はっきりとした理由は分かりません。

 道路以外や二階以上での測定値が微増しているのは、車が小さい道路まで入り込んだりして、 全体のバックグラウンドを上げているのではないかと推察されます。
図2
測定場所別経年変化 図2

 また、6月と12月の測定値について、調べて図3に示しました。 大体夏は低く、冬は高い値を示しますが、これは冬季に大気が逆転現象を示し、 汚れた空気が地表付近から拡散されにくくなる現象によります。

12月の値は年変化が大きく、6月と12月の値が時には逆転していますが、 これは12月に強い風が吹いて汚染が飛ばされたためと考えられます。
図3
夏冬別平均値経年変化 図3

 6月と12月の値の全データの地域別平均値の差を図4に示しました。 これには裏高尾での調査結果も入っています。 (裏高尾の報告の概要は23〜24ページに掲載しています。)

これから夏と冬の測定値の差は0.005〜0.01ppmということが分かります。
図4
夏冬別地域別平均値 図4
酸性雨も調べました
 酸性雨とは、工場や自動車などから排出された硫黄酸化物や窒素酸化物などの大気汚染物質が 雨水に取り込まれて、強い酸性を示すようになった雨のことをいいます。 酸性の度合いはpH(水素イオン濃度)で表し、pH1〜7未満が酸性で、値が小さい程酸性が強いことを示しています。
(例:蒸留水 pH7、オレンジ果汁 pH4、食酢 pH3、レモン果汁 pH2)
 一般に雨は自然な状態でも、大気中の二酸化炭素が溶け込んでいるため、pH5.6〜7です。 したがって、通常pH5.6以下の雨を酸性雨と呼んでいます。
 1993年12月から希望者が簡易測定用パック試薬を使って、酸性雨の測定をはじめました。
 pHの区分別に出現回数をみると、pH5.1〜5.4が最も多く、次いでpH4.7〜5.0、となっています。
酸性雨測定結果(1993年12月から1999年12月まで)
(出現回数)
pH3.8以下3.9〜
4.2
4.3〜
4.6
4.7〜
5.0
5.1〜
5.4
5.5〜
5.8
5.9〜
6.2
1993年12月〜1994年12月2591441103
1995年1月〜1995年12月325151262
1996年1月〜1996年12月14592430
1997年1月〜1997年12月28101816112
1998年1月〜1998年12月077924111
1999年1月〜1999年12月016151810
図5
酸性雨測定結果グラフ
市内の交通量変化
16号バイパスの交通量が増え続けている
 以前は家の前の道路で子どもが遊んでいました。 現在、そんな風景はめったに見ることは出来ません。 自動車の交通量が増え、遊べなくなったのです。
 1985年からの10年間で人口は約18%増加しました。 市内登録自動車保有台数は約60%増加,1982年からの16年間では約2倍になっています。
 道路もあちこちで新設されました。1985年10月に開通した国道16号バイパスが、一番大きな変化です。
 16号バイパスによって、市内の交通量がどう変化したのか調べてみました。 用いた資料は「八王子の統計」の「主要道路の交通量」です。 これは全国道路統計交通情報調査の交通量調査(交通センサス)に基づいています。 秋季の平日午前7時から午後7時までの12時間の上り下りの合計自動車類交通量です。
 16号バイパスの2地点で、1988年から1997年にかけて交通量は2倍前後になっています。 次に増加しているのが野猿街道で70%増、左入町の16号は50%増です。 野猿街道は多摩ニュータウンの開発に伴って、左入町の16号は、16号バイパスが合流したため、と考えられます。
 市内のその他の道路は、大和田20号、八日町16・20号、四谷高尾街道でほんの少し減少しているほかは、交通量が増えています。 16号バイパスの新設が、市内の交通量の削減とはならず、新たな交通需要を生じさせたことが分かります。
 交通センサスによると、1997年北野町16号バイパスは1日52,000台、大型車混入率は30%でした。 1999年から北野町会では大気汚染測定に取り組んでいます。2000年夏冬とも市内のワースト3を独占しています。

交通量の年変化
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